意外と歴史が長かった!日本最古のベッドは奈良・平安時代のもの!?

私たちが快適に眠るためになくてはならない重要な道具といえば「寝具」です。今でも畳の上に布団を敷いて眠る方もいれば、すぐに横になれるベッドを置いて寝ているという方など、ご家庭によって寝具の使い方はそれぞれです。そこで今回は、知っているようで知らない「ベッドの歴史」についてご紹介します。

 

奈良に登場した日本最古のベッド

歴史上で最も古いとされるベッドは、紀元前3200年のエジプトにおける埋葬品や壁画によって見ることができます。この時代におけるベッドの特徴はヘッドボートがないヘッドレスタイプであること、そして枕は使われていなかった代わりにヘッドレストが使われていました。ヘッドボードが初めて出来たのは、エジプト文明に続くその後の文明社会でのことです。そして、今から2千年前のローマ帝国時代には、現在でいうベッドルームの前進ともいえるキュビキュルムが作られました。

一方、日本に初めてベッドが伝わったのは「奈良・平安時代」のことです。もとは中国から日本にベッドが伝わったとされており、古代のベッドは正倉院に収められた聖武天皇と皇后が寝ていた「御床(ごしょう)」と呼ばれるものです。檜でできたベッドには足にスノコ状の部材を組み合わせて作る丈夫な造りになっており、その上には御床畳や敷物を使っていたとされています。

 

平安時代には豪華な「帳台」が登場

一方、平安時代に入ると御床のようなベッドに関する記録は発見されず、代わりに「帳台(ちょうだい)」と呼ばれる寝所が使われるようになります。帳台は4面を布で覆った部屋の中に畳が敷かれ、貴族の中でも位の高い人はここを寝床として使っていました。平安時代には畳文化が栄えたこともあり、むしろを何枚も重ねた八重畳(やえだたみ)が今でいう敷布団の役割をしていました。この頃には、中国から伝わったベッドは畳の普及により姿を消し、その後は庶民にベッドが普及し始める1950年代まで、日本では現在にも続く布団文化が確立してきたというわけです。

 

日本の寝具の歴史:木綿布団が普及される前の寝具事情とは?

いまは当たり前のように部屋の中にベッドがあって、ふかふかの布団をかぶって快適に睡眠をとることができます。そんな私たちの生活に欠かせない「布団」ですが、今のように不自由なく布団を使えるようになったのは、実は「昭和以降」だったことを知っている方はあまり多くないのではないでしょうか。ここでは簡単に、日本の寝具の歴史を布団文化の発展という点でご紹介します。

 

日本の寝具の歴史:縄文時代から江戸時代まで

縄文時代や弥生時代の日本人は、浅く掘った地面の上に屋根を乗せた堅穴式住居に暮らしてしました。そのため、毒蛇や虫などを寄せ付けないようにと、床よりも少し高い位置に寝られるようにゴザやむしろを敷いて寝ていたとされています。その後、奈良時代になると中国から伝わった御床(ごしょう)と呼ばれるベッドを寝具として使い、畳が普及した平安時代には畳を重ねて作った八重畳に敷物を敷いて寝ていたそうです。

しかし、奈良・平安時代における寝具は、貴族などの位の高い人だけが使用していたため、庶民の多くは古代と変わらずゴザやむしろを地面に敷き、その上に眠るという方法が一般的でした。鎌倉時代、室町時代、安土桃山時代には、襟などがついた「掻巻(かいまき)」や「御衣(おんぞ)」という掛け布団の原型とも呼ばれる寝具が登場していますが、これもまた身分の高い一部の人たちだけが使用できるものでした。その後、江戸時代に入ると今でいう敷布団が登場しますが、やはりこれも高級品であることから使用できるのは裕福な人や身分の高い人だけに限られていました。ただ、江戸時代の中頃になると徐々に庶民にも畳文化が普及し始めたことから、やっと地面ではなく畳のうえで眠ることができたといいます。綿ふとんは高級品であったことから、和紙で作られた「天徳寺」と呼ばれる紙布団を敷いていました。このように、日本の寝具の歴史は非常に長い時間をかけて進化を遂げてきましたが、一般庶民に今のような布団が普及するのはこの先の明治、昭和になってからのことです。

 

綿布団が庶民に普及したのは昭和時代、そしてベッドの登場!

柔らかくて暖かい布団に包まれていると時間を忘れてしまうくらい、ずっとその中で過ごしていたいと思うほどです。ただ、私たちが思っているよりも綿布団やベッドが普及し始めたのは意外にも最近のことだったのです。

 

明治時代に綿布団が登場!そしてベッドも・・・

これまでは、天徳寺と呼ばれる紙布団を寝具として庶民の間では使われていました。しかし、明治時代になると海外から「綿」が輸入されたことにより、やっと「綿布団」が登場しました。綿布団が登場した当初は、綿の敷布団や掛布団を使えるのは庶民の中でも一部だけで、都心部を離れた農村などでは、まだ粗末な藁のもみ殻などで寝ていたとされています。その一方で、明治時代にはイギリス留学を果たした宇佐見竹治氏が西欧文化として、ベッドで寝るというスタイルを日本に持ち入れました。湿気の多い日本では布団にカビが生えることを懸念した彼は、ベッド&マットレスという研究をしていましたが、普及したのは富裕層までで、一般の庶民までに普及させることは難しかったようです。

 

昭和に入り綿布団が一般庶民にも普及

今では私たちの生活に欠かせない寝具として存在する布団ですが、高級品であった綿布団が一般庶民にも普及し始めたのは昭和に入ってからでした。機械を使った紡績が行われたことで庶民でも手にできる価格に落ち着いたことも綿布団が普及したきっかけにもなりました。その後は長い間、日本では布団文化が息づいてきましたが、1950年代に入ると車のシートで使われるスプリングを利用してできたソファーベッドが登場しました。この頃からは、富裕層にだけ使用されていたベッドが一般の庶民にも普及し始め、日本の高度経済成長に合わせてさまざまなメーカーから良質なベッドが登場してきました。現代では布団やベッドなどの寝具が一般家庭に当たり前のように普及されていますが、自分に合った最高のベッドを購入できるようになるまでにはこのような長い歴史を経てのことだったのです。